山羊

私たちは、山羊なのかもしれない。
思い出してみれば私たちの星座は山羊だったのだけれど、
だから山羊だといった話でもなく、山羊なのかもしれない。

公衆トイレで髭をあたって繊細な手つきでぬれた髪をすく姿に出くわして、
紫陽花の前でぼんやりとかたづけが終わるのを待っているあいだ、
そんなことを思った。

「山羊はね、人間とちょうどよい距離にいるいきものなのよ。
犬や猫といったペットとも牛や馬といった家畜ともちがう距離感で、
人間の近くにいつも山羊はいたのよ。
山羊も人間するからね。まあ石も人間するけどね」
帰り道にまっちゃんが会議で言ってた話を思い出しながら登戸駅から電車に乗って、
スーパーに寄って最後の1個だったイエオストを買った。
口の中にひろがるキャラメル味をぶどう酒が喉の奥に流しこんでいく、
そんなことを繰り返しているうちに夜中になってしまった。

山羊にいうことをきかせようとやっきになるのは、まちがっている。
山羊はバスに乗って町田でも相模大野でも行くがいいのだ。


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